鹿の肩甲骨が納められた武蔵御嶽神社ならではのお守り
お守りコレクションblog
第152回目は東京都青梅市にある
武蔵御嶽(むさしみたけ)神社の
「灼鹿太占守(あらたかふとまにまもり)」です。
初穂料3000円(授与時)。
白いお守りはやはり高貴な雰囲気がします。
そこへ金の文字が加えられると
神が近くにいるような
そんな気持ちにさえなります。
そしてそのような
崇高なお守りはしっかりと
木箱に納められて授与されます。↓
さて。
この聞き慣れない「灼鹿太占守」。
いったいどのようなお守りなのでしょうか。
それを説明する前に
お守りに書かれてある
「太占神事」について
触れたいと思います。
木箱に説明が書かれた和紙が
同梱されていますので
載せますね。↓
要約しますと、
「太占神事」とは
一般公開されていない
武蔵御嶽神社のみに伝わる神事。
鹿の肩甲骨を齋火(いむび/不浄を斎み清めた火)
で灼(や)き、
できた割れ目の位置で農作物の吉凶を
占うというもの。
灼かれた骨は宮司自らが測定して
農作を十として、
一から十までの結果が判定されるということです。
それを踏まえた上での
「灼鹿太占守」となります。
こちらも説明書きがあります。↓
「灼鹿太占守」は
「太占神事」で用いられた鹿の肩甲骨が
納められたお守り。
武蔵御嶽神社のご祭神である
櫛眞智命(くしまちのみこと)が
御守護となり、
厄を祓い、知恵や良運を授けて、
人生を切り開く原動力になるようにと
祈願されています。
お守りの中に鹿の肩甲骨が入っているということで
怖いと思う人もいるかもしれませんが、
骨の形は一つ一つ違うはずで、
だからこそ貴重であり、
豊作を占う一種の道具だからこそ
神聖であるといえるのではないでしょうか。
魔除け、清らかさを表す「流水文様」が描かれている
裏面です。
「武蔵」は横文字で
「御嶽神社」は縦文字。
青梅市は武蔵国でありましたので
そのような神社名となっています。
背景に広がる柄は流水文様。
吉祥文様の一つで
「厄を流す=魔除け」
「流れる水は腐らない=清らかさ」
「火難除け」
などの意味があります。
こういう生地の編み方を
ジャガード編みというのでしょうか。
ちなみに
武蔵御嶽神社と長野県にある御嶽(おんたけ)神社は
別ものとなりますのでご注意を。
鎮座する山の名前も
武蔵御嶽神社は御岳山(みたけやま)、
御嶽神社は御嶽山(おんたけさん)です。
武蔵御嶽神社とは以下のようなところです。
紅葉シーズンは神社へ向かう参道が楽しい
武蔵御嶽神社へ向かうには
登山へ行くようなイメージ。
最寄り駅のJR御嶽駅を降りたら、
バスに乗り、
終点の「ケーブル下」で下車します。
なかなか急な登り坂を約3分ほど
歩いて行くと
ケーブルカー乗り場の「滝本駅」へと到着です。↓
標高は407mです。
東京湾のほうには海抜ゼロメートル地帯が
あることを考えますと、
東京は本当に奥が深いと思いますね。
ケーブルカーで
さらに登っていきます。↓
大人片道600円。
往復切符を買うと1130円。
最大傾斜は25度だそうです。
スキー場でいったら上級者コース。
そんな急斜面を涼しい顔をして
ケーブルカーは登っていきます。
作った人、大変だったろうなと思います。
終点の「御岳山駅」に到着です。↓
「山」がイラストチックになっているのが
かわいいですね。
駅が旧漢字の「驛」なのもいいですね。
駅の標高は831m。
「滝本駅」から約6分で424mも上へとやって来ました。
大展望台から撮った風景がこちら。↓
東京タワーや東京スカイツリー、
筑波山まで眺めることができるとのこと。
しかし
この日は目視できませんでした。
写真にも写りませんでした。
高性能なカメラなら別でしょうけど。
それでは武蔵御嶽神社へ向かいたいと思います。
参道の入り口は
ゲートのようになっています。↓
参道に入ると
すぐに鳥居があります。↓
鳥居を抜けると紅葉の景色。
これはすばらしい!↓
紅葉シーズンの山は最高ですね。
どんどん参道を歩きましょう。
杉の並木道もあります。↓
民家の間を抜けていくような
道も歩きます。
この周辺は旅館や民宿が多いようです。↓
一泊して朝から御岳山へ登ったら
気持ちいいでしょうね!
国の天然記念物である
神代欅(けやき)の登場です。↓
推定樹齢1000年、高さ30m。
幹が太くて、厳つくて
生命の力を感じます。
平安時代からの欅だそうです。
神代欅を過ぎると
お土産屋が立ち並ぶ通りがあり、
そこを通過すれば
いよいよ神社へ到着です。
標高929mの御岳山山頂に鎮座する武蔵御嶽神社
鳥居があり、
階段の向こうには随神門が見えます。↓
石碑の神社名がおどろおどろしい。。↓
随神門です。↓
扁額の文字が読みづらいですが、
「御嶽神社」と書かれています。↓
随神門をくぐると
また階段です。↓
階段を上っていくと
また鳥居が見えてきました。
銅鳥居です。↓
階段の左右には
講の碑がたくさん建っています。
江戸時代中期に社寺詣が盛んになり、
たくさんの講が組織されたといいます。
そうして御岳信仰が関東一円に広がりました。
階段を上った先に
拝殿が見えてきました。↓
拝殿です。↓
武蔵御嶽神社の創建は代10代崇神天皇7年。
736年(天平8年)、僧行基により蔵王権現が祀られて以来、
東国の蔵王権現信仰の中心として
広く知られるようになりました。
江戸時代に入ると
「西の護り」として
江戸城の方角を見るように
南向きから東向きに改築されます。
現在の拝殿は
幣殿とともに1700年(元禄13年)に
5代将軍徳川綱吉の命によって造営されました。
現在も修復を重ねながら
大切に使われているということです。
神社ならではの彫り物装飾は
お賽銭箱の下にもあります。
手を抜かない細やかな配慮を感じます。↓
向拝(こうはい/母屋の前に突き出た、
礼拝したり階段を昇り降りするための部分)
の天井部分にたくさんの龍が描かれています。↓
拝殿手前の両側には狛犬がおります。↓
盛り上がった胸筋のなんと勇ましいことか。
武蔵御嶽神社は「おいぬ様」信仰の地でもあります。
なので
御眷属(ごけんぞく)である狛犬を
とても大事にしていますし、
犬を連れて境内を歩いてもOKです。
ちなみに
「おいぬ様」とは「ニホンオオカミ」のことです。
御岳山の山頂でもある
武蔵御嶽神社の拝殿から見る景色。↓
標高は929mです。
連なる鋭角的な山々。
都会感ゼロ。
ここは本当に東京都なのだろうか。
本殿奥の玉垣内には「おいぬ様」が祀られている
拝殿の左側へ行くと
奥へ進める道があります。↓
突き当りの門を入ると
本殿奥の玉垣内に入場できます。
右を向くと
本殿が見えます。↓
ご祭神は
櫛麻智命(くしまちのみこと)
大己貴命(おほなむちのみこと/大国主命)
少彦名命(すくなひこのみこと)
廣國押武金日命(ひろくにおしたけかなひのみこと)※
※神仏習合の教説で「蔵王権現」と同一の神格とされています。
神様に最も近づけるといわれているのが
本殿裏。
裏参拝は欠かせません。↓
玉垣内にはたくさんの
お社があります。↓
大口真神社(おおぐちまかみしゃ)。↓
ご祭神は大口真神(おおぐちまがみ)。
大きい口をしている狼という意味で、
つまり、おいぬ様であります。
お社の両脇にはしっかりと
おいぬ様がおられます。
拝殿の前で構えていた
おいぬ様とはまた違った雰囲気ですね。↓
深く切れ込んだ大きい口から見える鋭い牙、
ごつっとした厳つい爪、
マフラーのような雄大な毛並み。
悪い奴が来たら
瞬く間にやっつけてしまうくらいの迫力です。
日本武尊が東征の際、
大鹿の姿で現れた邪神を退治します。
その戦いのあと、
霧に巻かれて道に迷ってしまいました。
すると白い狼が現れて
道案内したことで
無事に切り抜けることができたといいます。
日本武尊はその白狼に
「大口真神としてこの山にとどまり、
すべての魔物を退治せよ」
と、語りました。
それが所以で
「おいぬ様」信仰が始まり、
病魔、盗難、火難除けなど、諸難除けの神様として
崇敬されるようになりました。
大きなフサフサとした尻尾で火を消してくれる。
病気を運んでくるといわれていたネズミを食べてくれる。
特に幕末にコレラが流行した際には
「おいぬ様」のお札が江戸の町中に広がったといいます。
さらに
「おいぬ」は「老いぬ」にも通じ、
健康、長寿の神にもなり、
犬(戌)は安産、多産なことから
安産子育ての神としても尊崇されています。
常磐堅磐社(ときわかきわしゃ)。↓
全国の一之宮、87柱が祀られています。
もともとは本殿でした。
1511年(永正8年)に建立され、
1877年(明治10年)に現在の本殿に建て替えられた際、
移築されて常磐堅磐社となりました。
国指定重要美術品。
1952年(昭和27年)には
東京都指定有形文化財に指定されました。
皇御孫命社(すめみまのみことしゃ)。↓
ご祭神は瓊瓊杵命(尊)。
瓊瓊杵命(尊)は「ににぎのみこと」と読み、
天地が豊かに栄える状態を表し、
稲穂が豊かに実る国の壮健な男子
という意味の神様です。
神話に書かれた天孫降臨の主役で、
皇室の基礎神とされています。
皇御孫命社の前には
「おいぬ様」ではなく、
なぜか「イノシシ」が。↓
ミニブタのようにも見えますね。
なぜここだけ「おいぬ様」ではないのか
実は分かっていません。
江戸時代から置かれているようで、
1996年(平成8年)の台風17号により
北側の大杉が倒れた際、
その影響を受けて大破。
1999年(平成11年)に
青梅市の補助事業の一環として、
元の石の上を「覆う」形で
現在のように作り直したそうです。
立ち入り禁止の紐が張られた場所があり、
屋根の上部だけがポツンと置いてあります。
太占祭場です。↓
「灼鹿太占守(あらたかふとまにまもり)」の
原点ともいうべき太占祭りは
1月3日にここで行われ、
農作物の豊凶が占われます。
玉垣内から奥宮を望み
拝礼することができます。
奥宮遙拝所です。↓
あの山の頂上に奥宮があります。
今から行ってみたいと思います!
険しい道の先にある奥宮。到着したときの達成感はひとしお
銅鳥居付近まで戻ります。
すると
武蔵御嶽神社を背にして右へ曲がるところがあるので
そこが奥宮へ続く道となります。
岩石園、大岳山の方向です。↓
道が舗装されていたので
奥宮までこんな感じがずっと
続くのだろうと思っていました。↓
最初は下り坂です。
木が斜めに生えているのが
倒れそうで、ちょっと怖いです。↓
下ると
今度は登り坂となり
鳥居が見えてきました。↓
道案内が出ていた場所から
歩いて約10分。
鳥居を見たら
もう間もなく着くのだろうと思ってしまいますよね。
とんでもない。
ここから
道なき道を進むこととなります。↓
気軽に行けると思ったら大間違い。
とんでもなく険しい道を歩くこととなりました。
どのような靴を履くべきか超重要ですね。
木の根っこが階段の役割をするという事態です。↓
しかし
根っこがすべてが
安定しているわけではありません。↓
いったん道が落ち着きます。↓
それもつかの間。
またタフな道を歩くこととなります。↓
何かが見えてきた!
あれが奥宮か。↓
違いました。
橘姫と書かれた石碑でした。↓
弟橘媛(おとたちばなひめ)のことだと思います。
こちらの方は日本武尊のお妃さまです。
奥宮に祀られているのは日本武尊なので
夫よりも先に我々を
お出迎えしてくれたのでしょう。
ということはもうすぐなのかな。
いえ、まだまだ先です。
ここは道ですか?
単なる山の斜面ですよね。
ここを登らなくてはいけないなんて。。↓
二足歩行では無理です。
前かがみになって
ときより手をついて四足歩行にならないと。
ということは
手袋が必要ですね。
ここまで来るのに
もう1時間くらい歩いています。
けっこう体力も消耗しています。
それなのに
今度はチェーンを掴んで歩けと。↓
チェーンが必要ということは
この道は崖のようなものです。
写真には写っていませんが、
左側はやばいです。。
チェーンにしがみついて
なんとかこの崖を切り抜けました。
今度はでっかい岩が立ちはだかっています。↓
大きな岩を通過して
さらに登っていくと
何だこのシンプルな矢印は。↓
「奥宮はこちら」
と書いてくれ。
一応は伝わるけど、
1時間以上歩いていると
本当に道が合っているのか不安になります。
この矢印が奥宮を指しているのか
他の目的地を指しているのか、
疑心暗鬼になるんですよね。。
この辺りからは
木の根っこを階段代わりにするのではなく
天然の石段を上がっていくイメージです。↓
ついにお社へと到着しました。
「やったあ」↓
「奥宮だあ」
いえ、違います。
ここまでの道中、
下山する方から
「赤いお社が建っていますが、
そこは奥宮ではありませんので
注意してください」
という情報をいただきました。
奥宮と間違えて
ここで戻っていく方が多いといいます。
こちらのお社は
男具那社(おぐなしゃ)といいます。
日本武尊が祀られているということですが、
奥宮ではありません。
さらに上へと登らなくてはなりません。
それにしても
このような山奥の地にお社を建てた
大工さんはすごい!
どうやって木材を運んだんでしょうか。
またしても
登山道なき登山道を歩きます。↓
今度こそ到着です。↓
日が傾き、
西へ沈まんとする太陽に照らされた石の祠。
神秘的です。
映し出された大きな影に
秋の終焉と冬の始まりを知らせる
哀愁を感じてしまいます。
標高1077m。
武蔵御嶽神社から約1時間30分。
よくもまあ、こんな高さまで
登ってきたなと思います。
達成感は格別です。
奥宮が後光を放っているかのようです。↓
スマホで撮影しているのですが、
奥宮を写そうとするときにだけ
なぜだかシャッター音がしなくなるんです。
日本武尊が「うるさい音だ」と思って
消してしまったのでしょうか。
不思議な体験です。
加えて
奥宮を撮ろうとすると
光に弄ばれているのか
神がそうさせるのか
ハレーションが起きてしまいます。↓
逆光での撮影は何度も行っていますが、
ここまでは初めてです。
これって、もしかしたら
歓迎されているやも。
だとしたら
光栄であり、こんなにうれしいことはありません。
感謝です!
最後に。
山頂へ到達したお祝い!?
ガッツポーズの木です。↓
「うぉぉぉー!」
神様も祝福しているってことですね!
そう解釈します。
住所:東京都青梅市御岳山176番地
アクセス:JR御嶽駅よりバスに乗り「ケーブル下」で下車。
さらに「滝本駅」よりケーブルカーに乗り「御岳山駅」から徒歩約25分
http://musashimitakejinja.jp/
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